第10日目
(6月12日)
朝8時40分にホテルを出発、郊外にあるウォーター・フォード・クリスタルの工場を訪れる。
ここは、従業員を1600人も抱える1783年の創業の老舗で、見学も予約制になっている。
工場内に入り、吹き作業、カット作業、彫り作業と、順を追って、各工程を見てまわる。
ずっしりと重みのあり、厚みのある深く彫りこまれた幾何学模様がウォーター・フォード・クリスタルの特徴とか。
アメリカ大統領の就任祝いに、毎回豪華なセンターピースが贈呈されるという。
さて、工場見学の後は、ご他聞に漏れず、展示販売場に案内される。
当初は馬鹿高いものという先入観から、まったく買う気はなかったが、思っていたほどではなかったので、アイルランドへ来た記念にと、時計をはめ込んだ小さなものを買い求める。
時計自体はセイコー製だった。さもありなん。
10時05分、ウォーター・フォードを後に、北上し、いよいよ最後の宿泊地、首都ダブリンに向かう。
下の写真2枚は、いずれも途中に写真ストップしたところで、左が、エニスコーシイの町並み、右がフェーンズの教会の遺跡である。
更に北上し、アボカという村のレストランで昼食後、近くにあるトーマス・ムーア(1779〜1852)の石碑を訪れる。
風光明媚な緑濃き川辺のほとりにそれはあった。石碑には、次のように記されていた。(意訳)
「アボカの美しい谷よ!最愛の友と緑陰に抱かれてこの上なく静かに思う。
ここでは冷たい世の嵐の吹きすさぶこともなく、せせらぎのようにわが心は平和に浸る。」
まさにぴったりの渓谷美であった。
さて、更にダブリンに近づき、次に訪れたところは、グレンダー・ロッホ。
ここは、6世紀に聖ケヴィンがこの地で修行したと伝えられ、初期キリスト教会や修道院の遺跡が点在しているところである。ヴァイキングの襲来にも、深い森林に守られ、破壊を免れたそうだ。
しかし、12世紀に入り、ノルマン人がアイルランドに勢力を広め、次いでイギリスの支配が確立するにつれて急速に衰退していったという。
それでも庶民の信仰心に守られたため、完全な廃墟とはならず、長く聖地として知られたということである。
上の写真を左から説明すると、最初はゲートで、間にはセメントなどは一切使わず、自然石だけを組み合わせたアーチ型の門。
次はラウンドタワーで、内部は6層、高さは33mあり、先端にいくにつれ細くなっている。もともとは鐘楼として建築されたとのことだか、アイルランド内では最も保存状態がよいとされる。
面白いことに、この円塔の入口は地上3mのところにあり、外敵が来襲した際、この入口に梯子をかけて塔内に避難し、入口を閉め、敵の通り過ぎるのを待ったという。
3番目は、カテドラルで、9世紀ごろからの歴史をもつが、今は屋根もなく崩壊が著しい。。
4番目は、聖ケヴィン教会で、その形が台所のように見えることから、セント・ケヴィン・キッチンと呼ばれる。エジプトの建築技術が用いられ、重厚な造りは現在も生き残っている。
右端の写真は、墓地で、石板上の墓標とともに、アイルランドの象徴であるハイクロスが林立している。
18時、ダブリンのホテルに着き、この日の観光を終了した。
なお、出発地のベルファスト以来、丸9日間にわたり我々のバスを運転してきてくれたドライバーのトム氏はここで終わりということなので、労をねぎらい、握手して別れる。