第6日目
本日はちょうどメーデーにぶつかり、予定していたベルサイユ宮殿行きの観光バスは出ないことになったが、街全体は平穏そのもの、ついにデモらしきものは一つも見られなかった。ドゴール大統領が退陣した直後とあって、嵐の前ならぬ、嵐の後の静けさだったのだろうか。
午前中は観光バスを利用して市内を巡る。座席には幸いレシーバーが付いていて、テープに吹き込んである日本語の説明を聞くことができた。だが観光は、パリの街を一望に見下ろすことができ、かつ白亜の聖堂サクレ・クール寺院をその頂にもつモンマルトルの丘で15分ほど下車しただけで、あとはすべて窓からの眺めだけ。有名なノートルダム寺院やルーブル美術館もアッという間に視界から消えた。
午後は遊覧船でセーヌ川に遊ぶ。これは良かった。
500人は乗れようかと思われる遊覧船としては大型の船に、各国からの観光客が乗り込んで、まさに人種・民族の展覧会の感があり、それだけで興味を覚えたものだ。
マイクを通じて流れるフランス語独特の響きとリズムは、内容はわからなくとも、移り行く河畔の情景によくマッチし、いかにもパリにいるという感を深くし、うっとりと聞きほれた。
岸壁沿いの通りには、パリ市民が思い思いにそぞろ歩きを楽しんでいるのが見られ、また時折、桁外れな格好をした若者たちの姿も見受けられた。
さて、下船後は再びホテルにとって返し、近くのセルフサービスのレストランで夕食をとり、しばらく眠る努力をベッドで空しくした後、パリ随一のナイトクラブ「リド」へ午前1時からのショーを見に出かける。
昼間のうちにその位置は確認してあったが、少しでも近道をと思い、凱旋門まで上らず、逆に少し下がってから曲がろうと試みる。どっこいこれは大失敗。各道路は凱旋門中心に放射線状になっているため、隣り合わせの道路でもちょっと下がっただけで、その間はえらく開くことになる。
結局かなりの遠回りを余儀なくし、やっとシャンゼリゼ通りに出て、リドに着く。
中は意外に広いが、ぎっしりと客がつまり、人いきれでムンムンしている。
1時少しまわったところで、いきなり乳房もあらわな美女が大勢躍り出る。さすが一流のクラブだけあって確かに粒は揃っている。
美女たちの歌と踊りが一段落したところで、二人の男性による一輪車の曲芸。熱演する人の汗がライトに照らされキラキラ光る。思わず息を呑むシーンが数回あった。
この後は歌と踊りを適度にはさんで、大型スケールの手品、鞠の曲芸、コミックショー、更にはアイススケートまで現れたのにはびっくりした。
最後に噴水や滝まで出現させて舞台効果は満点、さすが本場ならでのショーであった。
ミニマム(シャンパン半本分)で50フラン(約3700円)は決して高いとは思えなかった。